「サスペリア」で印象に残ったシーン
出てくる人物たちのほとんど(特に女性。美青年、美少年も登場します)がバレエに関わる人間に相応しくほっそりとした体型で美しく、それと見合うように建物やセットの様式美も素晴らしく、私は映画館で最初に見た時に息をのみました。
バレエ学院の深紅と黄金の外観、青いアネモネ色のビロードの壁紙を張り巡らせたエントランスホールには中国の金刺繍で竜を縫い取った長椅子もアルコーブに置いてあります。
嵌め木細工をふんだんに用いた更衣室、ネプチューンの槍をモチーフにした手すりのある広いプール、柘榴の絵のステンドグラスの舞踏室、副院長室の美麗さはアールヌーボーと前世紀末芸術の粋というべき圧巻の見ごたえです。
その壁画はドイツのシュールレアリズムを代表するエッシャーの絵です。
最初の殺人の行われたマンションの浴室にも使われていますが。
しかし、それらはほとんどセットであり、撮影が終わると壊されたり燃やされたという話ですが非常に勿体なく感じるほどの出来栄えです。
「サスペリア」の全体の感想
はっきり言って理詰めの人々にこの映画の受けは良くありません。
魔女やキリスト教に関するお約束とも言えるような、ヨーロッパの知識や迷信を知っていれば、評価や印象も変わると思います。
それは日本に限らず海外の映画ファンにも同じことが言えますが、私は物語の整合性よりもあくまでムードを重視します。
映画は映画。現実とは違うのですから。
自分はこれまでに十回以上も初めから最後まで見てしまいました。
それほど強い印象をこの映画は放ち続け、昔と変わることがありません。
この映画を愛する人は映画や小説の必然性とか現実感にあまり疑問を持たない人たちではないでしょうか。
唯美主義という美学の思想がありますが、まさにこの映画はホラーの形式を採ったそれだと思います。
監督のダリオアルジェントの祖母の体験談からアイデアを得て、生まれた作品らしいのですが、おそらく人の人生の内で何度か起こりえる不可思議な実話、後で考えてもどうにも理屈のつけようのない不気味な出来事を生涯忘れず、強い感銘を持ち続けるのは世界共通という事ですね。
「サスペリア」で気になったところ、もやもやしたところ等
私は個人的にこの映画に対しての疑問点はありません。
オカルトとは元々そういうものだと思います。
この映画はホラーの中の古典中の古典。
エイリアンやサイコのように不滅に輝き続ける作品だと思います。
イエスは血をワインに変え、魔女はその逆を行う。
倒錯は悪魔の秩序と言う人もいますから、物語世界ではやはり不自然ではありません。