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アイヌ新法とは?問題点や正式名称は?立法の経緯を解説!

アイヌの近代史に触れよう!

アイヌ新法を解説するにあたって、アイヌの人々の苦しい歴史に触れないわけにはいきません。

ということで、まずは19世紀以降のアイヌの近代史を以下の年表に簡単にまとめました。

19世紀
1868年 江戸幕府が倒れ、明治政府になる
1869年 明治政府により、アイヌの人々が暮らす土地が「北海道」と命名される
1875年 樺太・千島交換条約により、800人以上のアイヌが北海道(宗谷)へ強制移住させられる
1876年 狩猟用の弓、毒矢が禁止される
1878年 サケ漁が禁止される
1899年 「北海道旧土人保護法」制定
20世紀
1904年 日露戦争に駆り出される
1923年 アイヌの中で語り継がれてきた物語をまとめた「アイヌ神吟謡集」刊行
1939年 第二次世界大戦
1945年 敗戦に伴い、千島、樺太のアイヌは北海道以南に移住
1946年 「北海道アイヌ協会」設立
1986年 中曽根首相が「日本は単一民族国家だ」と発言
1987年 国連総会でアイヌの代表がアイヌ民族問題について発言
1994年 アイヌ初の国会議員(萱野茂)誕生
1997年 アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律、通称「アイヌ文化振興法」成立
2007年 国連が「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を採択
2008年 国会でアイヌが日本列島北部周辺、とくに北海道に先住していた人々であり、独自の言語や宗教、文化をもつ「先住民族」だと認められる
2018年 国連人種差別撤廃条約委員会が日本政府にアイヌ民族の権利を保障するよう勧告
2019年 北海道150周年。アイヌ新法成立か?
2020年 東京オリンピックに合わせて「民族共生象徴空間」を開設予定

アイヌ語で「アイヌ・モシリ」と呼ばれる北海道及びその周辺地域(千島列島・樺太など)には、かつて「アイヌ」と呼ばれる独自の文化を持つ民族が、自然と共生しながら暮らしていました。

しかし、明治に入ると、アイヌ・モシリは本州からやってきた日本人(和人)によって「北海道」と命名され、国有地となってしまいます。

これを皮切りに、アイヌの人々は生きる糧である狩猟やサケ漁を禁じられた上に、入れ墨や耳飾りなどの風習を取り上げられ、日本語を強要されるという苦しい歴史が始まったのです。

特に約100年に渡って続いた「旧土人保護法」は悪法で、アイヌの人々にわずかな土地(しかも農地に適さない)を与えて強制的に農民化する法律でした。

これにより、農業に慣れないアイヌの人々の生活は困窮し、周囲からは差別的な扱いを受けました。

しかし、このような厳しい状況下でも、伝統文化に誇りをもつアイヌの人々は、先祖代々語り継がれてきた物語を本にまとめたり、アイヌの子どもたちのための学校を作ったりと、奮闘し、大戦後には「アイヌ協会」を立ち上げ、理不尽な制度や差別を撤廃する運動を本格的に始めました。

それでもなかなか成果は出ず、ようやく風向きが変わったのは、1994年に初めてアイヌ出身の国会議員が誕生した時です。

タイミングの良いことに、当時の官房長官が北海道出身でアイヌの民族問題に詳しかったこともあり、「旧土人保護法」改正の機運が一気に高まり、ついに1997年「アイヌ文化振興法」が制定されました。

ところが、このアイヌ文化振興法は、「アイヌの人々は先住民族である」とは明記されておらず、文化保護に偏った内容で、アイヌの人々が奪われた土地や狩猟の権利を奪還するには不十分な内容だったのです。

では、ここまでの流れを踏まえた上で、今回の「アイヌ新法」の話が持ち上がった経緯を見てみましょう。

「アイヌ新法」制定の背景には国際社会からの指摘があった!

ここ最近になって「アイヌ新法」成立へ向けた動きが活発になった背景のひとつに、世界的に、先進諸国の中で「先住民族の土地の権利や民族自決権(自己決定権)を認めよう」という人権尊重の気運の高まりがあります。

以前よりアイヌの人々は国際社会に向けて「アイヌの窮状」を訴えていましたが、2018年になり、国連の人種差別撤廃条約委員会が、日本政府に対し「アイヌの人々の土地や狩猟などを含む天然資源の権利を充分に保障するよう改善せよ」と勧告したのです。

2020年には東京オリンピックも開かれることですし、こうした国際社会からの指摘を無視することはできません。

そこで日本政府は、国際社会へ「日本はアイヌの人々の暮らしや伝統文化を守ってますよ♪」とアピールするために、オリンピックまでに法改正を行い、それに合わせてアイヌ文化の復興を目的とする「民族共生象徴空間」という巨大施設まで開設しようとしているわけです。

オリンピックを開くような国が、先住民族の人々に対していまだに差別的な扱いをしていては格好がつきませんからね。